セーリングには好条件が揃う浜名湖を滑走!
浜名湖に全国のトップセーラーが集結! 「ILCA6/7 All Japan Championships(全日本レーザー選手権大会)」が開催
年間を通じて風が吹く浜名湖は、セーリングの聖地とも言われています。2024年11月には「ILCA6/7 All Japan Championships(全日本レーザー選手権大会)」が開催され、全国からトップセーラーが集結しました。大会運営に携わった静岡県セーリング連盟・理事の中島量敏さんに、セーリングの魅力と浜名湖の可能性について話を聞きました。
(取材場所協力:静岡県立三ケ日青年の家)
セーリングとはどんなスポーツですか?
セーリングは、帆(セイル)を利用して水上を進むスポーツです。「ヨット」という言葉がよく使われますが、ヨットは「船自体」のことを、セーリングは「行為」のことを示します。ヨットにはエンジンを搭載したモーターヨットも含まれますが、セーリングは帆のみを使って進む行為に限定されます。競技としては、水上を滑走する速さや技術を競います
セーリングの魅力を教えてください
一番の魅力は、自然と触れ合い、一体感を味わえることです。私は長崎県の出身で、高校2年生のときに長崎県の大村湾で初めてヨットに乗ったんです。そのとき、風だけで船がスーッと進む感覚に魅せられて、セーリングにハマってしまいました。50年以上経った今でも、あの時の感動は忘れられませんね。
セーリングは、風が吹いたり吹かなかったり、天気が良かったり悪かったりと、そのときの状況によって感じ方が変わるので、楽しみに底がないんです。だから、私のように50年近く続けている人も意外と多いんですよ。自分の年齢や体の大きさ、体のコンディションに応じて、風を逃しながら自由にセーリングができるので、シニアの方も楽しめます。実際に、仕事をリタイアして時間に余裕が生まれ、浜名湖で趣味としてセーリングを楽しんでいる人もたくさんいます。一方、若い世代の方々にとっては、オリンピックを目指すことができるのも魅力だと思います。
全日本レーザー選手権はどのような位置づけの大会なのでしょうか?
全日本レーザー選手権大会は、日本のトップセーラーが集まる国内最高峰の大会の一つ。大会成績は、国際大会への選考や日本代表選手の選抜にも影響を与えます。この大会の会場は国内5ヶ所に限定され、浜名湖をはじめ、鳥取県の境港市、三重県の津市、山口県の光市、神奈川県の江ノ島で順次開催されます。毎回100艇前後の船が参加する全日本の大会なので、コンディションが比較的安定していて、安全な運営ができる場所が開催地に選ばれています。こんなにも大規模な大会が5年おきに浜名湖で行われていることを、地域の皆さんにぜひ知っていただきたいですね。
大会は、ILCA6とILCA7にクラスが分かれていますが、その違いはなんですか?
ILCA6とILCA7は、船体は同じですが、セール面積とマストの長さが異なります。簡単に区分けすると、ILCA7は男性選手、ILCA6は主に女性選手や軽量級の選手向けで、どちらもオリンピック種目として採用されています。
今回の全日本選手権大会はどんな大会でしたか?
今年は11月21日から24日まで、三ケ日青年の家を会場に開催されました。競技では、スタート地点からゴールまでコースが決まっていて、出場選手が一斉にスタートします。一周で約45分がターゲットタイムで、6km程度の距離で速さを競います。
この大会を運営するのには運営艇が12艇必要で、それを私たち連盟側で準備しました。4日間のうち、初日は大会準備や大会受付、開会式などを実施。2日目から競技が始まり、ILCA6に62艇、ILCA7に31艇、合計93艇が出場しました。選手の年齢層は幅広く、オプティミスト級からステップアップしたばかりの中学生から75歳以上のレジェンドクラスまで、多様な選手が熱戦を繰り広げました。
競技の1日目は晴天に恵まれ、風速15〜16ノットという、選手にとっては格好のコンディション。2日目は風速22〜23ノットと風が強く、ILCA6のレースでは約20艇が棄権しました。そして最終日は、天候の変わり目で風向きが安定せず、選手ファーストでやむなく中止となりました。
最終的にILCA7で優勝したのは三重県の21歳の男子選手。高校時代から浜名湖で何度も優勝したことがある選手で、東京オリンピックの出場選手と競り合っての優勝でした。ILCA6では、ずっとオリンピックを目指してきた日本の女子第一人者が優勝しました。
浜名湖の魅力はどんなところにありますか?
浜名湖は日本一素晴らしいセーリングの名所だと思います。その理由は、風が年中吹くから。スキー場に行っても雪がなければ困るでしょう? それと同じで、浜名湖は必ずどの季節でも風が吹くので、セーリングができるチャンスが多いんです。また、湖なので、もし船が流されたとしても、比較的安全を担保しやすい点もメリットです。さらに、日本の真ん中にあって、東名高速の三ヶ日ICにも近く、海面に出るまでの時間がかかりません。風と安全性とアクセス、これだけの好条件が揃った場所は他にないと思います。遠くから来た選手たちからも、「浜名湖はすごくいいですね」とうらやましがられます。
これからセーリングを始めたい人へのアドバイスはありますか?
セーリングを一人だけで始めるのは危険です。そのため、静岡県セーリング連盟では、セーリングの体験会を年に3、4回開催しています。それ以外に、浜松市ヨット協会主催のヨット教室も内山海岸で年3回開催されていますので、まずはそのどちらかへの参加をおすすめします。自分でヨットを動かせるようになるには、基本的に3回程度の参加が必要です。また、初体験は良いコンディションの日を選んで挑戦しましょう。年間でいえば、梅雨明けあたりがおすすめです。天気が良くて、風速は毎秒4メートル前後、気温は25、26度くらいがベストですね。
今後の目標を教えてください
第一に、オリンピックに出場する選手を育てることです。私は現在、次のロサンゼルスオリンピックを目指す選手のコーチをしています。その選手の名前は、三浦凪砂選手(24歳)。ILCA6高校女子でインターハイ、国体2冠を達成し、今年の鹿児島国体成年女子ILCA6クラス2位と、とても実力のある選手です。凪砂選手は現在、金融機関に勤めながら選手活動を続けています。仕事と競技の両立は簡単ではありませんが、職場の理解と協力を得ながら、世界の舞台を視野に入れて日々コンディションの向上に取り組んでいます。
こうした選手の育成をはじめ、今回のように大規模な大会の運営や、子どもたちの体験学習の指導、そして愛好家向けのポイントレースの開催などの活動を通じて、もっと地元の皆さんにセーリングのことを知っていただきたいですし、遠方から来る方々にも浜名湖の魅力をアピールしたいです。そして、浜名湖から世界に羽ばたく選手が誕生することを願って、これからも活動を精力的に続けていきたいと思います。
[静岡県セーリング連盟についてはこちら]
https://www.jsaf.or.jp/shizuoka/
年間を通じて風が吹く浜名湖は、セーリングの聖地とも言われています。2024年11月には「ILCA6/7 All Japan Championships(全日本レーザー選手権大会)」が開催され、全国からトップセーラーが集結しました。大会運営に携わった静岡県セーリング連盟・理事の中島量敏さんに、セーリングの魅力と浜名湖の可能性について話を聞きました。
(取材場所協力:静岡県立三ケ日青年の家)
セーリングとはどんなスポーツですか?
セーリングは、帆(セイル)を利用して水上を進むスポーツです。「ヨット」という言葉がよく使われますが、ヨットは「船自体」のことを、セーリングは「行為」のことを示します。ヨットにはエンジンを搭載したモーターヨットも含まれますが、セーリングは帆のみを使って進む行為に限定されます。競技としては、水上を滑走する速さや技術を競います
セーリングの魅力を教えてください
一番の魅力は、自然と触れ合い、一体感を味わえることです。私は長崎県の出身で、高校2年生のときに長崎県の大村湾で初めてヨットに乗ったんです。そのとき、風だけで船がスーッと進む感覚に魅せられて、セーリングにハマってしまいました。50年以上経った今でも、あの時の感動は忘れられませんね。
セーリングは、風が吹いたり吹かなかったり、天気が良かったり悪かったりと、そのときの状況によって感じ方が変わるので、楽しみに底がないんです。だから、私のように50年近く続けている人も意外と多いんですよ。自分の年齢や体の大きさ、体のコンディションに応じて、風を逃しながら自由にセーリングができるので、シニアの方も楽しめます。実際に、仕事をリタイアして時間に余裕が生まれ、浜名湖で趣味としてセーリングを楽しんでいる人もたくさんいます。一方、若い世代の方々にとっては、オリンピックを目指すことができるのも魅力だと思います。
全日本レーザー選手権はどのような位置づけの大会なのでしょうか?
全日本レーザー選手権大会は、日本のトップセーラーが集まる国内最高峰の大会の一つ。大会成績は、国際大会への選考や日本代表選手の選抜にも影響を与えます。この大会の会場は国内5ヶ所に限定され、浜名湖をはじめ、鳥取県の境港市、三重県の津市、山口県の光市、神奈川県の江ノ島で順次開催されます。毎回100艇前後の船が参加する全日本の大会なので、コンディションが比較的安定していて、安全な運営ができる場所が開催地に選ばれています。こんなにも大規模な大会が5年おきに浜名湖で行われていることを、地域の皆さんにぜひ知っていただきたいですね。
大会は、ILCA6とILCA7にクラスが分かれていますが、その違いはなんですか?
ILCA6とILCA7は、船体は同じですが、セール面積とマストの長さが異なります。簡単に区分けすると、ILCA7は男性選手、ILCA6は主に女性選手や軽量級の選手向けで、どちらもオリンピック種目として採用されています。
今回の全日本選手権大会はどんな大会でしたか?
今年は11月21日から24日まで、三ケ日青年の家を会場に開催されました。競技では、スタート地点からゴールまでコースが決まっていて、出場選手が一斉にスタートします。一周で約45分がターゲットタイムで、6km程度の距離で速さを競います。
この大会を運営するのには運営艇が12艇必要で、それを私たち連盟側で準備しました。4日間のうち、初日は大会準備や大会受付、開会式などを実施。2日目から競技が始まり、ILCA6に62艇、ILCA7に31艇、合計93艇が出場しました。選手の年齢層は幅広く、オプティミスト級からステップアップしたばかりの中学生から75歳以上のレジェンドクラスまで、多様な選手が熱戦を繰り広げました。
競技の1日目は晴天に恵まれ、風速15〜16ノットという、選手にとっては格好のコンディション。2日目は風速22〜23ノットと風が強く、ILCA6のレースでは約20艇が棄権しました。そして最終日は、天候の変わり目で風向きが安定せず、選手ファーストでやむなく中止となりました。
最終的にILCA7で優勝したのは三重県の21歳の男子選手。高校時代から浜名湖で何度も優勝したことがある選手で、東京オリンピックの出場選手と競り合っての優勝でした。ILCA6では、ずっとオリンピックを目指してきた日本の女子第一人者が優勝しました。
浜名湖の魅力はどんなところにありますか?
浜名湖は日本一素晴らしいセーリングの名所だと思います。その理由は、風が年中吹くから。スキー場に行っても雪がなければ困るでしょう? それと同じで、浜名湖は必ずどの季節でも風が吹くので、セーリングができるチャンスが多いんです。また、湖なので、もし船が流されたとしても、比較的安全を担保しやすい点もメリットです。さらに、日本の真ん中にあって、東名高速の三ヶ日ICにも近く、海面に出るまでの時間がかかりません。風と安全性とアクセス、これだけの好条件が揃った場所は他にないと思います。遠くから来た選手たちからも、「浜名湖はすごくいいですね」とうらやましがられます。
これからセーリングを始めたい人へのアドバイスはありますか?
セーリングを一人だけで始めるのは危険です。そのため、静岡県セーリング連盟では、セーリングの体験会を年に3、4回開催しています。それ以外に、浜松市ヨット協会主催のヨット教室も内山海岸で年3回開催されていますので、まずはそのどちらかへの参加をおすすめします。自分でヨットを動かせるようになるには、基本的に3回程度の参加が必要です。また、初体験は良いコンディションの日を選んで挑戦しましょう。年間でいえば、梅雨明けあたりがおすすめです。天気が良くて、風速は毎秒4メートル前後、気温は25、26度くらいがベストですね。
今後の目標を教えてください
第一に、オリンピックに出場する選手を育てることです。私は現在、次のロサンゼルスオリンピックを目指す選手のコーチをしています。その選手の名前は、三浦凪砂選手(24歳)。ILCA6高校女子でインターハイ、国体2冠を達成し、今年の鹿児島国体成年女子ILCA6クラス2位と、とても実力のある選手です。凪砂選手は現在、金融機関に勤めながら選手活動を続けています。仕事と競技の両立は簡単ではありませんが、職場の理解と協力を得ながら、世界の舞台を視野に入れて日々コンディションの向上に取り組んでいます。
こうした選手の育成をはじめ、今回のように大規模な大会の運営や、子どもたちの体験学習の指導、そして愛好家向けのポイントレースの開催などの活動を通じて、もっと地元の皆さんにセーリングのことを知っていただきたいですし、遠方から来る方々にも浜名湖の魅力をアピールしたいです。そして、浜名湖から世界に羽ばたく選手が誕生することを願って、これからも活動を精力的に続けていきたいと思います。
[静岡県セーリング連盟についてはこちら]
https://www.jsaf.or.jp/shizuoka/